2025.09.22

水道事業における広域連携:人口減少社会に向けた水道の未来

人口減少や施設の老朽化、人材不足により水道事業の持続性が懸念される中、広域連携が注目されています。本記事では、複数自治体が協力して効率的な運営を目指す取り組みの現状や課題、事例を紹介します。

広域連携の現状と課題

水道事業者の約8割が広域化の必要性を感じている一方で、実際に取り組む自治体はわずか2割にとどまります。進展が遅れる背景には、料金や財政、施設整備の差、情報共有や意識の違いなどがあり、特に料金や施設の格差が大きな障壁となっています。

  • 料金や財政状況の格差: 各自治体で水道料金や財政状況が異なるため、広域連携による料金設定や費用負担に課題が生じる。
  • 施設整備水準の差: 老朽化の程度や施設の規模などが自治体によって異なるため、施設の共同利用や統合が難しい。
  • 情報共有の不足: 広域連携に関する情報やノウハウが不足しており、具体的な取り組みが進まない。

広域連携によるメリット

広域連携により、各自治体単独では難しい効率化や安定供給が可能になります。具体的なメリットとしては以下の点が挙げられます。

  • コスト削減・効率化: 施設や運営の共同化でスケールメリットを活かせます。観光振興や地域課題解決、ローカルSDGs推進にもつながります。
  • 水源の共同利用: 水源を共同で利用することで、水資源の安定確保や水質向上が可能になります。
  • 災害対策の強化: 広域連携により、災害時の相互支援体制を強化し、迅速な復旧対応が可能となります。

広域連携の具体的な取り組み事例

広域連携の具体的な取り組みとしては、以下のような事例が挙げられます。

連携の類型概要主な特徴・効果事例
事業統合複数の事業体の経営主体・事業を一つに統合する。経営資源を一元管理し、給水原価の削減や技術・財政基盤の抜本的な強化が期待できる。香川県広域水道企業団、水巻町・北九州市
経営の一体化同一の経営主体が複数の事業体を経営する。事業認可は維持されるため、内部システムの統合が容易。管理体制の強化や利用者の窓口増加など、サービス向上にも寄与する。広島県水道広域連合企業団、大阪広域水道企業団
管理の一体化維持管理業務や総務系事務などを共同で実施または委託する。業務内容に応じた管理体制の強化やサービス向上、コスト削減が期待される。神奈川県内5水道事業者による水質検査業務の共同化
施設の共同化施設や設備を共同で設置・利用する。施設整備水準の向上や緊急時対応の強化、維持管理費・更新費の削減に効果がある。大牟田市・荒尾市共同浄水場、豊中市・吹田市共同配水場

広域連携の将来展望について

人口減少や施設老朽化が進む中、水道事業の広域連携は重要性を増しています。ICT活用や官民連携、地域特性に応じた事業モデルの構築により、効率化やコスト削減、水資源の安定確保、災害対応の強化が可能です。国や自治体、事業者が情報共有や人材育成、住民理解の促進に取り組むことで、持続可能で安全・安心な水道事業の実現が期待されます。