2025.05.23

近年増加する道路陥没事故

1. はじめに

近年、日本各地で道路の陥没事故が相次ぎ、老朽化した水道管や下水道管などのインフラが原因とされています。埼玉県八潮市の大規模事故をはじめ、各地で深刻な被害が報告されており、対策の緊急性が高まっています。本記事では、2024年以降の主要事故とその原因を調査・分析しました。

2. 背景:深刻化する日本の道路陥没問題

日本では道路陥没が頻繁に発生しており、国土交通省のデータによれば、年間約1万件に上ります。そのうち約2,700件は下水道管や雨水管の劣化が原因とされています。特に都市部では、老朽化した上下水道管の影響が大きく、戦後の高度経済成長期に整備された多くの管路が耐用年数を超えて腐食や破損を起こしています。水漏れによって周囲の土砂が流出し、地中に空洞が形成・拡大し、最終的に地表が陥没するのです。

3. 2024年以降に発生した主要な道路陥没事故

2024年以降、全国各地で複数の道路陥没事故が報告されました。以下に、報道や公的な発表で確認された主要な事例をまとめます。

発生日場所主な原因規模・被害状況
2024年2月11日千葉県 大網白里市水道管の漏水道路陥没。
2024年7月15日長崎県 長崎市大雨(豪雨)約20mにわたり道路崩落。
2024年9月4日千葉県 市原市老朽化した管渠・函渠(水道管の腐食・破損の可能性)4車線にわたり陥没。主要国道の交通寸断。人的被害なし。
2024年9月26日広島県 広島市下水道工事(シールド工法)中の異常出水・土砂流入東西約40m x 南北約30m x 最大深さ約2m。道路陥没、水道管破損・漏水、下水道施設損傷。周辺建物11~12棟にひび割れ・傾斜(後に解体決定)。住民避難、ライフライン寸断。
2024年9月~10月茨城県 水戸市老朽化した下水道管による土砂流出歩道が陥没(幅約2m x 長さ5m x 深さ約5m)。同箇所で3回繰り返す。
2025年1月28日埼玉県 八潮市老朽化した下水道管の破損当初:直径約5m、深さ約10m。後に直径40m超に拡大。2tトラック転落、運転手1名閉じ込め(後に死亡確認)。周辺で二次陥没、飲食店看板・電柱被害。広範囲(約120万人)に節水要請。長期的な復旧作業(約3年見込み)。

特に、八潮市と広島市で発生した事故は規模が大きく、その影響も甚大でした。八潮市の事故は、老朽化したインフラが抱える潜在的リスクが顕在化した際の深刻さを、広島市の事故は、都市部における大規模な地下工事に伴うリスクを、それぞれ象徴する出来事となりました。

4. 原因分析

2024年以降に発生した道路陥没事故を分析すると、その原因にはいくつかの共通点と特徴が見られます。

1.老朽化した上下水道管の優位性:多くの道路陥没事故では、老朽化した上下水道管が原因とされています。市原市や水戸市、八潮市の事例でも、管の破損や劣化が直接的な要因と見られています。長年使用された管路は腐食やひび割れを起こし、水漏れによって土砂が流出し、道路下に空洞が形成されます。こうした管路起因の陥没は全国で年間数千件発生しており、報告例はその一部に過ぎないと考えられます。
2.建設工事に伴うリスク:広島市の事例は、シールド工法などの地下工事が道路陥没を引き起こす可能性を示しています。工事中の出水や土砂の過剰除去が地盤を不安定にし、水道管の破損や地表の沈下を誘発します。調布市や博多駅前でも、同様の工事に伴う陥没事故が発生しており、工事リスクの重大性が浮き彫りになっています。
3.気象条件(特に大雨)の影響:長崎市の事例のように、集中豪雨が道路崩落の直接原因となることがありますが、多くは老朽化した管路周辺の地盤の脆弱性を顕在化させる引き金です。大量の雨水が土砂流出や地下水位の変動を引き起こし、地盤の安定性が失われることで陥没が発生しやすくなります。
4.要因の相互作用:道路陥没の原因は複合的に作用することが多く、老朽化した管路に加え、地下工事の振動や大雨が影響を及ぼすケースがあります。特に、脆弱な地盤やインフラは外的要因に対して被害を受けやすく、複数の要因が重なることで陥没リスクがさらに高まります。

5. まとめ

2024年以降の道路陥没事故は、日本の社会基盤の脆弱性を浮き彫りにしました。八潮市や広島市などの事例では、老朽化した管路が主因であり、大規模な地下工事や集中豪雨もリスクを高めています。これにより交通やライフラインの停止だけでなく、人命や住民生活にも深刻な影響が及ぶ可能性があります。今後は、老朽インフラの計画的な更新とリスクに応じた予防対策の強化が、持続可能な都市づくりにおいて不可欠となるでしょう。